韓国で部屋探しをしたことのある方なら、おそらく一度は耳にしたことのある言葉、チョンセとウォルセ。
留学生活の大半を「孝試院(コシウォン)」というむちゃくちゃ狭い部屋で過ごしていた私にとって、マンション暮らしは夢のまた夢だと思っていました。
というのも、韓国、特にソウルで生活するための家賃がめっさ高いからです。。なぜそんなに高いのか。
その原因のひとつが、チョンセという韓国の変わった賃貸制度です。
韓国で部屋探しをする際には必ず出てくると思うので紹介しておきたいと思います。
チョンセとウォルセとは?
チョンセ(専貰,전세)とウォルセ(月貰,월세)。漢字で見てもどういう意味なのか分からないのですが、まずウォルセとは、毎月決まった家賃を払う契約。これは日本でアパートを契約するときとほぼ同じスタイルです。
ちなみに、日本でおなじみの敷金や礼金というものは存在せず、保証金だけを大家さんに払います。
保証金の額はピンキリで、保証金が多くなればなるほど、月々の家賃が少なくなるそうです。
一方、チョンセの方ですが、これはある程度まとまったお金を大家さんに保証金として預ける代わりに、月々の家賃が免除される契約です。
契約期間はだいたい2年。契約更新時にチョンセの額が上がることもありますし、新しい居住者がいれば、出て行かなければなりません。
ただし、契約時に預けた保証金は全額戻ってきます。(大家さんが夜逃げしたりしない限り)
チョンセにするメリット
月々の支払いがなく、しかも解約時に保証金が全額返ってくる。これだけ見ると、契約する側にとっては、すごくおいしい話だと思いますが、じゃあ、大家さんはどうやって利益を出しているのか。
想像はつくと思いますが、一般的にはチョンセ保証金の運用による利子です。
別記事でも書きましたが、ゼロ金利の日本に比べると、韓国の銀行の金利はそれなりに高く、たとえば、預かったチョンセの保証金を、年4%の定期預金にすれば、家賃相当の収入が入ってくるというわけです。
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日本の銀行に同じ額を預けたとしても、雀の涙ほどにしかならないと思いますが、、とにかく居住者にも大家にもありがたい制度というのが、一昔前のチョンセだったのです。
マンションではなくオクションだ
このチョンセ制度が成り立つためには、高金利であることが条件です。ところが、ここ数年で韓国の銀行の金利は下がってしまい、大家側も昔のようにチョンセで収益をあげるのが難しくなってしまいました。
だったらどうするのか。そう、チョンセを値上げするしかなくなるのです。
たとえば、1LDKの物件で、今まで日本円で800万円くらいだったのが、1500万円になったり、物件によっては億を超えたりと、チョンセの相場がここ数年でむちゃくちゃ上がってしまいました。
このことを実感したのは今から3年前くらいです。結婚の話が話題になると、みんな口を揃えて「住む家がない」と言い出すのです。
そりゃ日本でも高級マンションだと中々、手を出せない人が多いと思いますが、「結婚したいけど住む家がない」という人は極めて少数じゃないでしょうか。
私自身も最初は、冗談だと思ってたんですが、いざ部屋探しをしてみると、新築マンションは仕方ないとして、築10年、20年のアパートの保証金の高さに衝撃を受けました・・・・
「あれはマン(万)ションじゃなくてオク(億)ションだよ。会社の役員にでもならないと入居できないよ」
昔、昼休みに会社の上司が江南でぼやいていました。
ウォルセが馬鹿らしい
それでも結婚したら、とりあえず住む家を探さなければなりません。親がチョンセを肩代わりしてもらうか、でなきゃ自分で保証金を用意する必要があります。
多くの人がとっている方法が、銀行で住宅ローンをくむというものです。月々の家賃の支払いの代わりに、銀行にローンを返済するわけですが、保証金が戻ってくることを考えると、悪くない選択かもしれません。
もう一つは、チョンセをあきらめてウォルセにするというものです。実際に昔に比べると、ウォルセ契約をする居住者が増えているそうです。
で、私もチョンセは早々にあきらめて(笑)、ウォルセにしたわけですが、みんな口を揃えて「えーもったいない」って言うんですよーー;
ちなみに、ウォルセの相場ですが、数百万円の保証金で、数万円の家賃になります。
ここら辺が日本と韓国の住宅事情を反映しているようでなかなか興味深い点なんですが、韓国人の感覚だと、「ウォルセ=無駄な出費」と考える人が多いです。
我々、日本人にとっては、家賃をできるだけ安く抑えたいという感覚は持っているかもしれませんが、まぁ、これもチョンセが生み出した幻想なのかもしれません。
「ウォルセにしたら生活費が減るから、絶対にチョンセにするよ」という友人もいましたし、中には「ウォルセなんか馬鹿らしい」と豪語する猛者もいました・・・
おわりに
一昔前だったら、チョンセは魅力的な賃貸制度だったと思うのですが、韓国の経済状況を見る限り、この制度を支える前提条件はとうの昔に崩れ去っています。
にもかかわらず、保証金をつり上げる大家が増える一方で、この点に関しては法的に規制がないように見受けられます。これだと部屋探しに苦労する人は後を絶たないと思います。
韓国の食堂やレストランの入れ替えが激しい理由も、売り上げの減少もありますが、実は家賃の値上げだったりします。韓国では大家と不動産の力が強いようです。